
透析中の血圧低下が多くて対処が大変です。

血圧下がったらとりあえず下肢挙上して様子見ておけば大丈夫。

何も考えずに、とりあえず下肢を挙上するのはまずいな...
今回は血液透析をしていると、必ずと言っていいほど起こる透析中の低血圧について、簡単にまとめてみました。
目次
血圧とは

血圧について簡単に説明していくよ。
血圧とは血管内の圧力です。心臓から流れる血液が血管を押す力のこと。
血圧は体のすべての血管にありますが、普通は動脈とくに上腕動脈の圧力を意味します。
血圧は、心臓が血液を押し出すときの最も高い血圧が収縮期血圧(上の血圧)、拡張して血液の流れが緩やかなときの最も低い血圧が拡張期血圧(下の血圧)です。
血圧の高さは、物理的には心臓が血液を押し出す力(心拍出量)と血管の抵抗で決まります。
心拍出量は、体液量の増加(腎不全における細胞外液貯留)や運動時の心拍数増加などで増える。
血管の弾力性(抵抗)も血圧に関係し、動脈硬化が進むと、上の血圧は高くなり、下の血圧は低くなります。
その他末梢血管抵抗を規定する因子として、寒冷刺激、交感神経緊張、痛み刺激などで血管が収縮し、血圧が上昇します。入浴や温暖での温度上昇、少量のアルコール摂取では血管拡張により血圧は下降します。
また、血圧は、腎臓や神経(中枢神経や自律神経)、内分泌系(腎臓や副腎などのホルモン)、血管内皮細胞からの血管収縮、もしくは拡張を進める物質など、多くの因子によって調節されています。

「透析中になんで血圧上がるんだ!」って怒る人がいますけど、自分で自分の血圧を上げてたんですね。

血圧の上昇下降にいちいち反応し過ぎて血圧上がっちゃうんだね。
いったん落ち着けばいいんだけど...
透析中に血圧が下がる原因
透析中低血圧(Intradialytic hypotension:IDH)とは、透析中の血圧が収縮期血圧として20mmHg以上、あるいは症状を伴って平均血圧が10mmHg以上、急激に低下した場合と定義されている。
透析療法によって、血液浄化器を介して血液中の尿毒症物質と水分が除去されると間質から血液中へ尿毒症物質と水分が移動し、されに細胞から間質から尿毒症物質と水分が移動する。
血液中からの水分除去されることで血液量は減少するが、間質からの補充(Plasma refilling)が行われるため、血液量は回復して血圧を維持しています。
血圧が下がる原因は
①除水速度がPlasma refilling速度より速い
↓
②循環血液量減少
↓
③心室内血液の減少
↓
④心拍出量減少
↓
透析中低血圧
1)透析に関連する原因として
①ナトリウム濃度の低下
②カルシウム濃度の低下
③溶質除去による浸透圧低下
④透析液の液温による血管拡張
⑤酢酸透析液による血管拡張
2)患者に関連する要因として
①降圧薬の服用
②自律神経障害
③透析中の食事摂取
3)循環器に関連する要因として
①心血管障害
②心嚢液貯留
③末梢循環不全
4)体液量に関連する要因として
①過度な除水速度
②低すぎるドライウェイト
5)患者状態に関連する要因として
①貧血
②低酸素血症
③感染症

こんなに原因があったらそりゃ血圧低下しますよね。

どれが原因で血圧低下しているのかを見極めていかないとね。
透析中の低血圧を防ぐには?

血圧の低下しないようにするにはどうしたらいいですか?

じゃあ予防方法や治療方法を紹介していこう。
自分が出来る事には限りがあるから、Dr.と相談したりすることも必要になってくるよ。
透析中低血圧の予防と治療方
1)体液バランスの維持
①体重増加の抑制
②ドライウェイトの再設定
③等張補液(生理食塩水など)
④高張補液(10%NaCl、50%ブドウ糖液など。口渇症状がでる可能性あり)
⑤アルブミン製剤
⑥貧血の改善(造血薬、輸血など)
2)交感神経刺激
①低温透析(透析液温度35.0℃など。悪寒がする可能性あり)
②昇圧薬の使用
3)降圧薬の選択や服用法の検討
(透析日の朝に間違って飲んでくる場合も...)
4)透析、除水法の検討
①血液透析濾過
②長時間透析(5時間以上)
5)酸素投与
6)低血圧を呈する合併症の治療(心不全など)
7)透析不足の是正(透析量の評価)

原因と対処方法が分かってくれば、何とかやっていけそうです。
あれ?下肢挙上は・・・?

あれ?気づいちゃった?
下肢挙上は予防にも治療法にもならないんだよね。
血圧低下時の下肢挙上

血圧低下時の対応として、必ずしも下肢挙上がよいわけではないのはなんでですか?

下肢挙上により、心拍出量の増大・動脈血圧の上昇がそれほど期待できないとする研究があるんだよね。
“一時的に脳血流を保持するための対応”であることを理解しておこう。
①本来の下肢挙上の「目的」
下肢挙上は血管迷走神経反射による血圧低下に効果があり、ショック時の応急処置として実施される。
血圧低下により脳血流が低下し、脳が虚血状態になり不可逆的な障害を残す事があるため、ショック時の下肢挙上は、まず脳血流を保持する事を最優先として行われます。
②下肢挙上による「効果」
下肢挙上は、重力によって下肢の静脈血が右心房圧を増大させることにより、心拍出量が増大し、それにより動脈血圧を上昇させると考えられています。
しかし、下肢挙上時の心拍出量は、仰臥位と比較して、20秒後に増大するものの、7分後には仰臥位と同様になることが報告されています。

下肢挙上してすぐに血圧測定して上がっていたとしても、10分後に再測定をしたら下がっているのはそういう事だったんですね。
また、下肢挙上時の心拍数および1回拍出量は仰臥位姿勢時と明らかな差がなく、増大した下肢からの静脈血は腹部の下大静脈に貯留され、下大静脈に貯留される血液量が心臓への還流量を調節する可能性があるという報告もあります。
したがって下肢挙上は
①単純に下肢の静脈還流が心拍出量を増加させ血圧上昇させているというわけではないこと
②下肢挙上がいつまでも血圧上昇に効果があるわけではないこと
以上の2点を押さえたうえで実践することが大切です。
下肢挙上の注意点
下肢挙上をする時の注意点は、禁忌の場合や、症状が悪化したり、合併症を起こしたりします。
- ・うっ血性心不全
(心臓から血液を送れない状態なのに、多くの血液が心臓に戻ってくるために負担増える) - ・下肢血流の低下
- (閉塞性動脈硬化症や糖尿病など下肢の血流が悪い患者の場合、末梢の血流障害が悪化する)

透析患者さんの場合、うっ血性心不全や糖尿病の場合が多いから危ない行為だったんですね...

循環血液量が低下した場合の失神などのショックに対する下肢挙上はOKだよ。
ただ、ショック状態が落ち着いてからは体をフラットな姿勢にして循環動態を良くしてあげた方がいいね。

血圧が低い=下肢挙上ではなくその原因の解決を優先する方が大切です。
まとめ
今回は血圧低下について簡単にまとめてみました。
透析中に血圧低下が起きる原因は主にPlasma refillingが原因ですが、他にも下がる要因はあります。
それらに対して適切な対処を行う事により、血圧低下を防ぐことが出来ると思います。
上司や先輩がやっているからと、何も考えずに下肢挙上をしているのであれば、すぐにやめたほうがいいでしょう。
その患者さんの下肢を上げてもいいのか、上げる必要があるのかを考えてみましょう。

とりあえず下肢挙上ではなく、血圧低下について別の方向からアプローチできるよう勉強します。

下肢挙上が必要な場合もあるから、まだまだ覚える事はいっぱいだね。

血圧低下発見!足上げますね!

・・・・・・
コメント